2023年6月3日に協力団体である認定NPO全世代主催による『第11回 全世代フォーラム』が開催されました。
YDPAは企画段階から協力し、当日は同NPO理事でもある仁木がMCとして参加しました。
下記は、『全世代通信』に寄稿した報告文です。
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1.全体の流れ
冒頭の大宅代表理事の開会の挨拶では、NPO全世代が設立された経緯や現在の活動についての説明があり、加えて、市民社会の重要性と政策形成における市民参加の必要性が強調されました。その後、菅原理事、内田理事からの活動報告を経て、金子敏明氏(茨城県議会議員)、菅野志桜里氏(一般社団法人国際人道プラットフォーム代表理事)、堀場明子氏(公益財団法人笹川平和財団主任研究員)、内田健夫氏(全世代理事)、浅井麻紀氏(同)によるパネルディスカッションを行いました。
議論の中では、選挙や政策決定者との関わりを通じた市民の政治参加、既存の回路を開いて生かす方法、市民の思いを言語化し知識や専門性を補うコーディネーターの必要性、共感を通じた政策への関与、永田町改革とそれを実現する政治家やリーダーの選定システムの重要性、有事の際の政策形成のプレイヤーの検討とそれらを平時に構築しておく必要性などが話し合われました。
パネルディスカッションのまとめとして、各パネリストに政治参加する市民として、コーディネーターとして政策形成に向き合う際にそれぞれが大事にしているものをお尋ねしたところ、菅野氏は「エビデンスとタイミング」、堀場氏は「共感」、内田氏は「情報と戦略、専門家としての倫理」、浅井氏は「思いをアウトプットする勇気」、金子氏は「医師として恥ずかしくないか」というキーワードを挙げ、議論を終えました。
最後に結語として、尾身代表理事より、回路を開く社会にするタイミングが今まさに来ているという指摘と共に、タイの国民運動の事例を挙げ「三角形は山をも動かす」という言葉の紹介がありました。市民と政治家や行政官などのディシジョンメーカー、そしてこれらをブリッジする触媒としての専門家などの翻訳者。これら三者が揃いトライアングルを形成することで社会を変えることができるとの指摘です。加えて、そのような翻訳者の参画を促すために、WHOでの経験を踏まえ、議論のプロセスと結果を書き残しオープンにすることの重要性が述べられました。選挙で選ばれた人と市民の間にもう一つワンレイヤーを作りトライアングルを形成する、そのようなメカニズムを構築し、わかりやすい提案書をたたき台として出し、それを支持する政治家を皆で推す、とりわけ、これからの若い人や女性の中に日本を託せる人たちを多く作り、このメカニズムと連動させることで人々の共感が得られるのではないかとの指摘がありました。
2.今後の取り組みの参考となるサマリー
フォーラムのパネルディスカッションで話し合われた内容をもとに、NPO全世代の今後の取り組みの参考にすべく、主なポイントを以下にまとめます。
<選挙や政策決定者との関わりを通じた市民の政治参加>
国、都道府県、基礎自治体、それぞれの役割と政策範囲を踏まえた既存の回路がどう動いているかという理解は必要。地域性が高い政策課題には注意を要する。現状、議員に対しては日常的な接触や選挙を通じたアプローチが有効といえるが、他方、予備選挙やくじ引き民主主義のようにシステムとして市民の意思を取り込む新しい方法を提起する考え方もあり得る。
<既存の回路を開いて生かす方法>
政府や行政の側に余裕を作ることで行政官が自ら遊撃手として社会に出向き、回路を開くことができるという意見もある。また、政党がパブリックコメントを行い短期間で1000件以上の意見を集めた事例もあり、政府・行政、立法府、それぞれの既存の回路をより社会に開くことで市民参加を促す方法もあり得る。ただし、中央省庁で言えばそのような余裕を作るためには霞ヶ関改革が必要となるが、そのためには永田町改革が必須であり、国対政治のような現在の国会システムを変える必要がある。しかし、永田町改革を今の国会議員にできるのかという問題がある。新しい人を市民社会側から押し込むことが望まれる。
<市民の思いを言語化し知識や専門性を補うコーディネーターの必要性>
政策形成には一定の迅速性やクオリティが求められ、トップダウンではそれらが担保しやすい一方で現場との乖離が生まれやすい。ボトムアップで政策形成を行う際には、政治や政策に関する専門的知見と倫理観を有し、エビデンスを示しながら機運を見て行動できる市民と政策決定者間の翻訳を行うコーディネート力を有するプレイヤーの存在が必要。表に出てこない「フィクサー」ではなく「コーディネーター」として役割や目的を明らかにすることで市民社会が関与しやすくなる可能性がある。この存在により、「政治家でなくても政治をする」ことができる可能性が生まれる。また、特に迅速性やクオリティが求められる有事の際にどのように動くべきかを平時の時から検討しておくことも重要。
<共感を通じた政策への関与>
市民の支持をボトムアップによる政策形成の正当性の根拠とする場合、多数の市民参加が必要となる。その時に必要なのは「共感」であり、皆が思っていることを言語化し伝えていくセンシティビティが必要。前述のコーディネーターの資質の一つとなり得る。また、YouTubeやSNSなどの情報発信チャネルを活用した方法論についても検討の余地がある。
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