2016.10.25

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20代で当選した地方議員の皆さんの選挙事情を取材していて聞いた話ですが、地域の有権者の方から次のように言われることがよくあるそうです。

「もう一票あったら、あなたに入れたいんだけどね~。」

この話に想を得て、本シリーズでは、「一票で二人以上に投票できる選挙制度(=多連記投票制)」の可能性とその影響ついて検討を重ねていきます。

私たちは、選挙は「一票で一人しか選べない」と思い込んでいるかもしれません。公職選挙法第三十六条で「投票は、各選挙につき、一人一票に限る」とされています。しかし、実は、「多連記投票制」は、日本でも過去に国政選挙で採用されていた歴史(第22回衆議院議員総選挙・1946年)があり、当時の選挙法も「一人一票」だったのですが、政府の公式見解では「一票の投票の中に一人を書く投票と、二人を書く投票、三人を書く投票があり得る」(堀切国務大臣答弁・1945年12月5日)と述べられていたことはあまり知られていません。現在でも米国のいくつかの州の地方議会選挙で採用されているなど、意外と一般的な制度といえるでしょう。

地方議会選挙において「多連記投票制」を検討することは、地盤のない新人・若年候補の不利な状況を解消する目的だけでなく、価値観や生き方の多様性が重視される昨今、自分の意志を代弁してくれそうな候補者を1人だけ選ぶのは困難ではないかという見方や、「議会」を会社でいうところの「社外取締役員会」とみなせば、多様な専門性や特徴を有するメンバーをポートフォリオとして選択すべきという考え方を補強することに役立つのではないかと考えます。

このような考え方に基づき、第一弾として、先月9月25日に実施された兵庫県三田市議会議員選挙において、投票日前日の9月24日に同市内電話帳掲載世帯に対する無作為電話調査を実施しましたのでその結果をお知らせいたします。なお、本調査は、投票率が高く、ネットリテラシーが低いと思われる高齢層にリーチするため電話調査で実施いたしました。

調査方法

・電話帳掲載世帯への無作為抽出による電話調査(自動音声ダイヤル選択式)
・最終回答数 304件
・実施日 平成28年9月24日(土) ※市議会議員選挙投票日前日
・対象地域 兵庫県三田市

設問内容

問1 投票にいきますか?
問2 応援している議員や候補者はいますか?
問3 複数の議員を当選させる議会の選挙において、一人の候補者に投票する方法と、二人以上の候補者に投票する方法のどちらがより自分の考えを議会に反映できると思いますか?
問4 一人の候補者を選ぶとき、何を重視して選びますか?
問5 二人の候補者に投票できるとしたら、二人目をどういう基準で選ぶと思いますか?
問6 支持政党を教えてください。
問7 性別を教えてください。
問8 年代を教えてください。

全結果集計

※クリックで拡大します

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回答集計結果からいえること

・実際の投票率が49.02%の選挙において、投票に行く層(89.1%が投票にいくと回答した60代以上が78.3%を占める層)の単記投票制と多連記投票制の支持率はほぼ同じ(43.8%、44.7%)

・複数の投票先を選べる場合、二人目の候補者を選ぶ基準として、「主義・主張や政策が自分と近いこと」を理由に挙げる人の割合が11.6%増加し、その他の理由が全て減少する(「経歴や実績」、「自身の直接的な利益」、「支持政党や団体などの推薦や公認」、「知人や親戚からの推薦」、「年齢」、「見た目などの容姿」)

最も減少する投票基準理由は「支持政党や団体などの推薦や公認」(14.1%→10.5%

 

(参考)クロス集計分析

・多連記投票制を支持する層は、単記投票制を支持する層に比べ「主義・主張や政策が自分と近いこと」や「自身の直接的な利益」を基準に投票先を選ぶ傾向があり、単記投票制を支持する層は、多連記投票制を支持する層に比べ「経歴や実績」や「支持政党や団体などの推薦や公認」を基準に投票先を選ぶ傾向がある。

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・「公明党」と「共産党」支持層は投票先がほとんど固定しており、次いで、「自民党」、「民進党」、「日本のこころを大切にする党」、「その他の政党」支持層は約半数が投票先を固定している。対して、「日本維新の会」と「社民党」支持層、「支持政党はない」層は投票先が固定していない人が多い。

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・二人以上の候補者を選ぶ選挙の方が、現在の選挙よりも民意が反映されると考える人が多いのは「自民党」「共産党」「日本のこころを大切にする党」支持層、「支持政党はない」層であり、それ以外の政党支持層は現在の選挙の方が民意が反映されると考える人の方が多い。「民進党」と「日本維新の会」支持層は「どちらも変わらない」と考える人が一定層存在する。

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「自民党」「公明党」「共産党」支持層は、二人以上投票できるようになれば、「主義・主張や政策が自分と近いこと」を投票基準にする人が大幅に(約20%以上)増加する。

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・多連記投票性を支持する層は各年代に一定層存在している(標本数が少ないため信頼性には欠けるが、「40代未満」からの支持が圧倒的に多いのは注目に値する)。

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niki●調査担当:仁木崇嗣(一般社団法人ユースデモクラシー推進機構代表理事)
1986年10月、奈良県生まれ。陸上自衛隊少年工科学校卒、デジタルハリウッド大学院修了。デジタルハリウッド大学メディアサイエンス研究所研究員。株式会社火力支援代表取締役。

中学を卒業後、陸上自衛隊少年工科学校に入学、航空学校を経てヘリコプター整備士として6年間自衛隊に勤務。21歳時に一般幹部候補生試験合格を期に退職、ベンチャー企業勤務を経て、23歳で起業。デザイン&ICTを活用した公共部門の調達支援事業を展開、とりわけ選挙支援の実績は延べ100件を超える。

2015年4月、統一地方選挙で全国に136名誕生した20代当選議員とSNSを通じて、約2ヶ月間で53名と直接会った結果、デジタルネイティブ世代から政治を変えられることを確信する。

若手議員に加え、同じ問題意識を持つアクティビストらと協働し、同年7月「一般社団法人ユースデモクラシー推進機構」を立ち上げ、全国の地方議会のアップデートを通して日本の民主主義の質の向上を目指し活動中。